2010年12月3日金曜日

ラグランジュ特別セミナー

アカデミー・デュ・ヴァンのワインクラブ会員限定特別セミナー、シャトー・ラグランジュの回に行ってきました。ウェブ会員に登録した人にのみ案内が来たみたいなので、まだの方はぜひ。

先月のボルドー旅行の際、サンジュリアン村で訪問したのは、三級ラグランジュよりもジロンド河寄りで、畑が隣接している二級グリュオ・ラローズ。残念ながら、ラグランジュは入口の門だけしか見られなかったんですよね~

シャトー・ラグランジュは経営難から一時評価が低迷していたものの、1983年に日本企業であるサントリーに買収され、復活を遂げたシャトー。 椎名敬一副会長が直々にプレゼンして下さいました。


お話の中で、興味深かったポイントをいくつか挙げてみると…
  • ぶどう樹を125~135cmの高めに仕立て、葉域を十分に取って光合成を促し、ぎりぎりまで待って収穫する(ボルドーで見たカベルネ・ソーヴィニヨンはどれも背が低かった)。
  • ステンレス樽の小型化に投資をし、105に分けた畑の区画の個性が出るよう別々に仕込んでいる。それらのブレンドすることで、ラグランジュらしい「スタイル」を維持するのが狙い。
  • 買収後に植えたカベルネ・ソーヴィニヨンの樹齢が20年以上になったため、2005年以降のラグランジュはいわば「新世代」。プティ・ヴェルドの比率を下げることで、骨格がしっかりしていながらも品があり、余韻がある、といったワインが造れるようになった。
  • ぶどうの栽培から行うラグランジュは「水と生きる」「人と自然と響きあう」といったサントリーの企業理念を体現する存在である。
  • 投機対象となり、価値や価格は上がるが実際に口にされない、できない、一級・二級のグランヴァンとは異なり、ラグランジュは「消費されるグランヴァンの最高峰」を目指したい。

実際に現地に行った記憶がまだ新しいので、訪問した別のシャトーと比べたり、テロワールの感じを思い出せるのが楽しい。それに、企業の立場からのワイナリー経営の話を日本語で聞く機会はあまりないので、興味深い。日本企業が本場フランスのワイナリーを買収・立て直したのは、本当にすごいことです。映画化とか、ドラマ化とか、されないのかな?

さてさて、お楽しみの試飲の時間…

Les Arums de Lagrange 2008
SB20%、セミヨン30%、ミュスカデル10%。柑橘、焼き栗の香り。セミヨン比率が高めで、やや肉厚。昔は新樽100%、澱を残してバトナージュしていたが、今は新樽70~80%、小樽での発酵にして果実味を引き出すようにしているとのこと。樽のニュアンスは軽く鼻に抜ける程度。フルーティー。


Les Cygnes de Saint Julien 2006
CS64%、M29%、PV7%。2004年から造られている3rdワインは、軽めのカベルネ・ソーヴィニヨン主体。黒い果実の香りが支配的。渋味が強めなのは2006年のヴィンテージらしいのだそう。プティ・ヴェルドとプレス・ワインで骨格を与える。2005年、2009年などの良年には造られない。


Les Fiefs de Lagrange 2007
CS54%、M39%、PV7%。2ndワイン。メルロ―の比率が高めなので、香りにフルーティーさが際立ち、柔らかくバランスの取れた味わい。2006年とは明らかに違います。綺麗な果実味が印象的。


お待ちかね、Chateau Lagrangeの異なるヴィンテージの飲み比べ。

Chateau Lagrange 2007
「冷涼な気候が育んだシルキーなタンニン」
2007年は一般的には酷評されたヴィンテージですが、冷涼な夏をしっかり乗り越えたぶどうは、秋以降の好天の影響おかげで素晴らしいワインに仕上がっている、とのこと。CS68%、M25%、PV7%。ジャムのような凝縮感のある果実の香り。タンニンはきめ細やかで、飲み終わりにかけて口の奥がぎゅっと引き締まる感じ。フルーティーで繊細、まだまだフレッシュな若々しいワイン。


Chateau Lagrange 2003
「よく熟した長期熟成型のワイン」
CS57%、M33%、PV10%。猛暑の年だったそうで、香りにコーヒーのようなロースティーさが。酸が低く、口の中でやわらかく広がる感じ。やや香ばしく甘いカラメルのような後味。飲み頃だったのか、素直においしい。


Chateau Lagrange 2001
「逞しい骨格を感じるスタイル」
2000年という良年の翌年で、あまり評価されなかったヴィンテージ。遅摘み(M10/3~、PV10/5~、CS10/6~)の年。CS62%、M27%、PV11%。熟成感のある香り、少し動物的なニュアンス。タンニンは始めはがっしりしていて、だんだんスパイシーに感じられるように。プティ・ヴェルドの個性がよく出た年だそうで、後口をぐっと引きしめている。


Chateau Lagrange 1985
「メルロ―が良く熟した表情豊かなワイン」
サントリーが買収して初のビッグ・イヤーがこの1985年。青い野菜のような香りは典型的な当時のボルドーのスタイルで、年を経るとスパイシーに変わっていくそう。そう言えば、丁子や漢方のような香りにも取れます。古い喫茶店でじっくり淹れてもらった、コーヒーのような味わい(スターバックスのコーヒーではない)。まだフルーティーさもあり、エレガントでどこかせつない味。


左から、2007年、2003年、2001年、1985年。


ラグランジュ、ますますおいしく感じました。もっといろんなシャトーやドメーヌのことを知りたい!