2011年9月8日木曜日

シャトー・ディケム訪問

メドック・マラソンに参加する楽しみの一つが、シャトー(ワイナリー)巡り。ツアー参加者は2グループに分かれて、それぞれ3つのシャトーを訪問しました。

最初の訪問先は、シャトー・ディケム(Ch. d'Yquem、ソーテルヌ地区特1級、http://www.yquem.fr/)。メドック地区の格付けと同時に1855年に制定されたソーテルヌ地区の格付けで、特1級(Premier Cru Superieur)はシャトー・ディケムのみ。フランスの最高級貴腐ワインを造っているシャトーです。

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ボルドーから車で2時間弱、ガロンヌ川の上流にあるソーテルヌ地区に到着。


シャトー・ディケムが見えてきました。ソーテルヌ地区でも一番の高台にあります。


「Yquem」の文字が刻まれた門をくぐって、シャトーの中へ。


シャトー・ディケムの貴腐ぶどうちゃん。味見するには勇気が必要…



黄色に王冠のマークがかわいい案内板に導かれて、敷地の中へ。


丘の上に建つシャトーはまるでおとぎ話のお城のよう。屋根や壁の色、ぽってりとした建物のかたちが、ワインの雰囲気にぴったり合っている気がしませんか?


いちばん標高が高いところからのぶどう畑の眺め。左手に見えるのは、昨年の11月に訪問したシャトー・スデュイロー。イケムがずっと高台にあるのが分かります。

今年は、甘口貴腐用のぶどうの収穫は訪問した前々日の9月6日から200人体制で、辛口白のY(イグレック)用のぶどうの収穫は8月7日から。この日は雨のために作業はお休み。


醸造所の方へ移動する途中、壁画に囲まれた素敵な通路がありました。



事務所の入り口にも王冠のマーク。いちいちかわいい♡


醸造所内に入って正面の壁画も素敵です。


写真を見ながら、貴腐ぶどうの説明を受けます。ソーテルヌ地区では、木々の影を細く蛇行して流れる水温の低いシロン川が、大きく緩やかな温かいガロンヌ川に流れ込んで朝霧が発生。その湿気によってぶどうに貴腐菌がつきやすくなります。午後からはからっと晴れて、ぶどうが乾燥。その繰り返しが完熟した甘い貴腐ぶどうを育てるのだそう。


シャトー・ディケムの畑の区画図。自家消費用に黒ぶどう(Vigne Rouge)も植わっているそう。イケムの赤ワイン、飲んでみたいですね。


甘口貴腐ワイン用には、熟練した200人が4グループに分かれ、貴腐菌がついた傷んでいないぶどうの粒だけを粒選りでぷちぷちと収穫します。その期間は2~2カ月半に渡り、収穫も40回、仕込みも40回。年によってぶどうやワインの量が極端に少ないこともあるそう。

ぶどうは4回にわけてプレス、新樽で発酵・熟成、3か月おきに滓引き。春にイケムになれるかどうかを判断し、イケムになれないワインはネゴシアンの手に渡り、AOCソーテルヌになります。イケム用に選ばれたワインは、アッサンブラージュして2年めの熟成へ。2010年ヴィンテージはなんと60%がAOCソーテルヌになったそう。お高い理由が分かります。


辛口白ワインはステンレスタンクで発酵させ、4~5か月の樽熟成。2011年ヴィンテージは、2010年のイケムの樽を使っています。


2年め以降、ワインが眠る地下の熟成庫へ。美しいらせん階段が伸びています。


熟成庫の入口。大きな金庫のようです。


ため息がでる光景。壮観です。これ全部でいくらになるのかなあ。


向かって右手に2009年ヴィンテージ…


左手に2010年ヴィンテージ。2年半の熟成中です。すやすや…


テイスティングルームへ移動して、お楽しみの試飲の時間。ボルドーの大手シャトーのテイスティングルームのデザインには、そのシャトーのセンスやスタイルが反映されていることが多いように思います。シャトー・ディケムは、洗練された中に木や光のあたたかみが感じられるデザイン。やや暗めのライティングが、貴腐ワインの色合いを一層美しく引き立てます。



WSETの教科書にも写真が掲載されている、古いヴィンテージのボトルたち。熟成によって、こんなに色が濃くなるんですね。貴腐ワインは糖度が高いので、長く熟成がききます。


びしっとまっすぐ並べられたワイングラスにプライドを感じる…


試飲したのは、2008年のシャトー・ディケム。春には雨や雹の影響で開花が難しかったものの、夏は好天に恵まれぶどうがよく出来た年。但し、収量が少なく、12hlしかありません。クレームブリュレのような香ばしい樽香、柑橘のさわやかさ、トロピカルフルーツのような完熟した果実味、ハチミツのようなとろみ。朝一番のソーテルヌはやみつきになります。


ごちそうさまでした!